【海外インバウンド事情】欧米をメインターゲットに急成長!~北アフリカ・モロッコのインバンド事例~

Traditional clay houses in Ait Ben Haddou village, a UNESCO world heritage site in Morocco

1.ヨーロッパとの地理的な近接性をもつ北アフリカ・モロッコのインバンド傾向

日本に「インバウンド」という言葉がすっかり定着した昨今だが、インバウンドが官民の重要な成長戦略の柱となっているのは日本に限った話ではない。国連世界観光機関(UNWTO)によれば2015年国際観光客到着数は4%増の12億人を達成し、2016年の値も4%程度増加するとみられている。世界的に国境を超えたヒトの移動が加速する中で、北アフリカに位置するモロッコは歴史的にもヨーロッパとの交流が盛んな地域で、観光先進国であるヨーロッパの国々を受け入れてきた実績を持つ国である。2010年から2012年にかけては訪日外客数を上回る外国人観光客を受け入れており、日本のインバウンド伸び率が短期間で乱高下してきたのに対し、2014年まで安定してプラス成長を維持してきた特徴もある。

モロッコ_1

2.安定した観光収入に支えられるモロッコのインバンド

モロッコは2001年に国内経済の中心に観光業を据え「Vision2010」を策定、次いで2010年には観光地開発や人材育成などを含めた観光開発包括プラン「Vision2020」を発表するなど、積極的に観光振興を進めてきた。こうした国家的な取り組みが功を奏し、モロッコの観光収入は2007年まで20%前後の高い伸びを示し、近年は80~90億ドルで安定している。外国人観光客総数や観光収入が日本の1/2という数字からはモロッコにおける観光産業の存在感を想像し難いかもしれない。しかし日本のGDPに占める旅行・観光産業の直接寄与額割合が2.6%なのに対し、モロッコでは8.0%(2015年、世界旅行ツーリズム協議会)とモロッコ第2の雇用機会となっていることから、その規模の大きさがわかるだろう。

モロッコ_2

3.安定した成長率のカギを握るのが重点市場エリア

モロッコのインバウンドは地理的にも近距離なヨーロッパ市場を成長の基盤としてきた。2000年代前半までは外国人観光客数の約50%がヨーロッパからであった。しかし近年、モロッコを訪れる外国人にも変化が起きている。2016年1月~9月の統計で、イギリスやドイツ、フランスといった欧米諸国の伸び率が1桁のマイナスを記録する一方、ロシア市場が102%、中国市場が184%のプラス成長率を示した。これまでモロッコのメインターゲットであったヨーロッパ市場に代わり、アジアやロシア市場が高い成長率をみせている点は国際観光客到着数の傾向と一致している点も興味深い。また、2016年6月には中国国籍の旅行者に対しビザ取得を免除するなど、入国管理の面からも観光にテコ入れしていることが伺える。ヨーロッパという比較的安定した市場をベースに、新規市場を開拓している点に、安定した成長率の要因を指摘することができよう。
観光統計からは安定した外国人観光客数と観光収入の推移が特徴として読み取れるが、モロッコのインバウンドの強みは、実は目の肥えた欧米の旅行者に鍛えられてきた観光の質的側面にある。モロッコの質的な強みについては、稿を改めて紹介したい。

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