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[ 市場レポート ]

【フォトレポート】 カナダの観光地・観光関連施設におけるピクトグラム

最終更新:2016-10-17 12:31:30市場レポート

 外国人旅行者に日本で困ったことを尋ねると、「案内表示のわかりにくさ」をよく指摘される。例えば、交通機関の乗り換え表示や行き先表示などである。外国人旅行者にインタビューをした際に実際に聞かれた話として「日本でキャッシングが手軽にできるようになったと聞いたが、場所がわからなかった」という事例もある。確かに、多言語に対応したコンビニのATMで海外のカードを利用しキャッシングができるサービスがすでに始まっている。しかし、話をしてくれた旅行者はそもそもどこに行けばこのサービスを利用できるか知らなかったというのである。適切な案内表示は旅行者にとって親切であるだけでなく、時に自社が提供するサービスにとっても重要であることがこの事例からも思い至るだろう。今回はカナダの観光地や観光関連施設の案内表示を参照しながら、インバウンドにおけるピクトグラムの有効性を考える。

 最初の1枚はカナダ東部に位置するノバスコシア州のペギースコープに設置された案内板である。文字情報で示されているのは州名とビジター・インフォメーション・センターのみとなっているシンプルな案内表示だ。もちろん、案内所であることは文字を読むことなく左上に掲げられた「?」のマークですぐに理解できる。案内板左側に目を移すと文字情報は一切ないものの、ペギースコープの目玉である灯台の方向と駐車場の方向が一目でわかるようになっている。シンプルなデザインで一見情報不足にも思えるが、必要なタイミングで必要な情報が伝わるよう工夫されている表示にはピクトグラムが効果的に使用されている場合が多い。

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写真1 ノバスコシア州ペギースコープの観光案内所前に設置された案内表示

 次の写真はノバスコシア州の州都ハリファックスのVIA鉄道駅構内の表示である。ここでもやはり文字情報が最低限に抑えられ、鉄道駅で旅行者が必要な情報をピクトグラムが伝えている。カナダの公用語は英語とフランス語であるため、公共施設では二言語で表記をする必要がある。もし情報の選別を行わず文字で情報を伝えようとすれば、文字も小さく混然とした印象になりわかりにくい案内表示になってしまう。ピクトグラムが言語の壁を越えて必要な情報を伝えるツールとして有効であることがこの1枚からもよくわかるだろう。

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写真2 ハリファックス駅構内に掲げられた案内表示

 最後の写真はノバスコシア州の海岸に沿って走るルート333上に設けられた案内板である。カナダの雄大な自然は誰もがイメージされると思うが、もしカナダに日本の高速道路出口にあるようなけばけばしい広告や方向表示があれば美しい自然の風景も台無しだろう。この案内表示を見ればわかるように、背景となる自然の緑と同系色を使った表示は景観を損ねるような過度な主張をしない。さらに、具体的な施設名称や距離表示をそぎ落としシンプルなピクトグラムを使用することで、運転をしながらも方向確認が容易に行える。写真中にはないが、こうしたピクトグラムを辿っていくと施設周辺には名称が書かれた表示も設置されており、いつまでたっても場所がわからず彷徨うといった事態は起こらないよう工夫されている。
 冒頭で取り上げたキャッシングの事例も、わかりやすいピクトグラムを用いた表示によって防ぐことができた可能性がある。外国人旅行者の中には日本の英語表記が小さすぎて用をなさないと感じる人もいる。ピクトグラムを効果的に使うことで、スペースを取る文字情報を最低限に抑え、必要な情報を適切なタイミングで提示するすることが旅行者の満足度向上にもつながることだろう。

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写真3 ルート333上に設置された都市と施設の方向が示された案内板

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