[ 市場レポート ]
【フォトレポート】観光と購買を促進するインタープリテーションの重要性
最終更新:2016-10-17 12:33:03市場レポート
カナダで有名な土産品と聞いて、メープルシロップを思い浮かべる人は多いと思います。カナダでは4つの州で生産されているメープルシロップですが、なかでもケベック州は世界最大の生産地です。ケベック州で最も大きな都市モントリオールにはメープル製品を扱った専門店「Délices Érable & Cie」があります。旧市街のメインストリートであるサン・ポール通りに面した同店には国内外から多くの人が訪れる人気店です。
写真1 メープル専門店Délices Érable & Cie
店内には看板商品のメープルシロップのほか、バターやジャム、お菓子など商品のバラエティは多岐に渡ります。2016年に改装したこともあり、広々とした店内は非常に明るく大きなディスプレイや商品紹介の映像が映し出されています。また、ほとんどすべての商品をテイスティングすることができ、スタッフの商品に関する説明を聞きながらメープルについての理解を深めることができるのも同店の魅力の一つです。
写真2 木材を使い暖かみのある店内風景
店内奥にはイートインコーナーも設けられており、メープルシロップを使用したアイスクリームやコーヒー・紅茶などをいただくことができます。そしてイートインコーナーの脇の一角に設けられているのがメープルシロップの精製や種類について知ることのできるガイド端末です。写真3の右下に見えるこのガイドは英語とフランス語のほか、日本語や中国語など多言語に対応しています。
写真3 店内に設置されたガイド端末
このガイドではメープルの歴史にはじまりメープルの精製過程やメープルシロップの種類について詳細な解説がされており、日本ではなじみのないメープルシロップが作られる地域や過程にまでイメージが膨らみます。本来であれば博物館や資料館で提供されるようなこうしたガイドを店内に設置することは、単に来店客の知識意欲を満たすだけにとどまりません。購買意欲の促進にもつながるという点において意味があるのです。
例えば同店では3種類の100%メープルシロップを販売しています。みなさんはメープルシロップの種類と聞いてすぐにピンとくるでしょうか。実は採取された時期によってメープルシロップは色も味も香りも異なるのです。また、種類によって適した用途も異なります。メープルについて深い知識を持たない来店客に対し、先ほどのガイドでは採取時期によって異なるメープルシロップの特徴を説明してくれます。解説を通じて最も早い時期に採られたメープルシロップがゴールデンシロップと呼ばれ、最も繊細な香りを有することを知った来店客はどうでしょう。そのメープルシロップが最も高価な商品であったとしても購入していくと思いませんか。販売する商品の背景を伝授するインタープリテーションは購買促進にも効く重要な要素です。
写真4 メープルの種類に関する日本語の解説
写真5 メープルシロップの採取・精製といった細かい情報を日本語で得ることができる
そして、店内でメープルシロップについて興味を持った来店客はシロップが精製される現場が見たくなります。そうすると、インタープリテーションの効果は販売のみならず観光の分野にも波及していきます。実際、Délices Érable & Cieのスタッフの中にはメープル農家を訪れる観光客に随行したことのある人もいるとのこと。観光客の動きを点から線へ、線から面へ拡げていく方策のヒントとしてインタープリテーションの有効性を見直してみると良いかもしれません。