INBOUND REPORT

[ 市場レポート ]

【海外インバンド事情】ヨーロッパの観光客を惹きつける生活一体型の観光資源 ~北アフリカ・モロッコのインバンド事例~

最終更新:2017-04-28 17:28:25市場レポート

ヨーロッパ市場をベースに発展してきモロッコのインバウンドは、目の肥えた観光客を相手に観光を生業としてきた経験がある。モロッコにおける外国人観光客の地域別構成比をみてみると、ヨーロッパからの来訪が40%以上を占め、日本のアジア比率80%とは全く異なる構成であることがわかる。

また、モロッコ国外に在住する外国籍を持ったモロッコ人の割合が約50%を占める点も特徴的である。いずれにしても、観光先進国であるヨーロッパの観光客を惹きつける理由がモロッコのインバンドを支える基盤となっており、モロッコの事例からヨーロッパ市場の特徴についても考えてみたい。

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まず、モロッコで人気の観光スポットとして代表的なのが、フェスやマラケシュといった歴史的ある街の旧市街であろう。実際、細い路地が入り組み、商店が所狭しとひしめき合う旧市街では、多くのヨーロッパからの観光客を見かける。こうした場所で必ず起こるのが、観光客と現地の人との交流である。モロッコでは時にネガティブな評価を受けるほどに、特に観光を生業とする現地の人からの積極的なアプローチを受ける。飲食店で食事をする際にも、商店でモロッコの特産品を購入する際にも、会計の際にしか言葉を交わさないなどということはない。そもそも、モロッコにおける商品の販売形態として基本的に値段は交渉制であり、特に旧市街では店舗面積の小さい個人商店が集積していることに、観光客と現地人のコミュニケーションが必然となる背景にあると言ってよい。

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こうしたコミュニケーションが促される観光地域の特徴は、観光客向けの作り物の空間ではなく、住民の生活と一体となった空間であるという点である。日本のインバウンドの事例を参照すると、欧米系の観光客に人気となった地域やレビューサイトで高評価を得ている地域は、「伝統的」といった言葉で表せられるような地域に根差した資源や魅力が評価されていることに気付く。高野山の宿坊や栃木県の日光、はたまた新宿ゴールデン街やカプセルホテルが外国人観光客向けに開発されたものではないのは周知のことだろう。モロッコがヨーロッパの国々のディスティネーションとして成立する背景には、現地住民の「日常性」と観光客の「非日常性」の混在がある。インバンドや観光を軸に持続的な地域活性化や地域振興を進めるには、「日常性」と「非日常性」の共存を確立することが必要ではないだろうか。

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